2021/04/25 17:28




 ほのかな紅色、はっとするような鮮やかな赤、一部分が変化して出る淡い緑。一位窯で主に絵付けに使っている「釉裏紅(ゆうりこう)」にはさまざまな色彩があり、一作品ごとに表情が異なります。


 窯の炎の揺らぎによって、時に作家自身にも思いがけない色合いが顔を出しますが、それこそが一位窯の釉裏紅の最大の魅力ともいえます。


 釉裏紅は、中国の元時代を起源とする絵付けの技法の一つ。銅を発色剤とした下絵具で描き、釉薬(ゆうやく)をかけて窯入れ後、最終的に炎の筆致や温度によって色が決まります。
 紅色が中心ではありますが、銅の発色によってはその濃さが変わったり、緑色が現れたりと千差万別に仕上がります。「夢の色」といわれるゆえんです。
 
 一位窯を開いた先代の故・田中一晃は、若い頃に「釉裏紅」に魅せられ、以来その発色の難しさや奥深さに傾倒していきました。
 
 
 「釉裏紅ものがたり」では、一位窯の釉裏紅について特集します。次回は、一晃が釉裏紅を始めた経緯について紹介したいと思います。